口腔乾燥症は、唾液分泌量の減少による口腔内の異常な乾燥状態を示す症状名で、口が渇く、ねばねばする、しゃべりにくい、飲みこみにくい、味がわかりにくい、口の中や舌が痛いひりひりする、汚れやすい、口が臭い、入れ歯が装着しにくい、くちびるが切れるといった自覚症状があります。
重度になると、唾液分泌量が低下して口腔内の乾燥が進行し、強い口臭、舌表面のひび割れ、疼痛により食事や会話がしづらいなどの障害が現れます。
平均的な唾液の分泌量は、一日あたり約1~1.5リットルで、口の中の唾液腺から湧き出し、口の中の食べかすを、消化器官へと、洗い流してくれています。
また唾液には抗菌作用があり、口の雑菌の繁殖を防いでくれています。そのため、唾液が不足して口が乾くと、口腔内の自浄作用が不良となり、う蝕や歯周病にかかりやすくなり、また、口臭の原因にもなってしまうのです。
原因としては、大きく以下の3つに分けられます。
1)薬や病気によるもの
・薬の副作用:抗うつ剤、鎮痛剤、血圧降下剤、抗ヒスタミン剤、抗パーキンソン剤などの多くの薬物に唾液分泌低下の副作用が報告されています。
・病気:唾液腺の病気やシェーグレン症候群(唾液腺や涙腺などが萎縮して口と目が乾燥する自己免疫疾患)、口腔周囲の放射線治療、糖尿病などにより口腔乾燥が生じます。
2)身体的な変化によるもの
・加齢による唾液分泌機能の低下や、噛む筋肉が衰えると唾液分泌量が低下します。
・ストレスがかかると、自律神経の作用により唾液分泌量が低下します。
3)生活習慣によるもの
・口呼吸を習慣にしていると口の中が乾きやすくなります。
・飲酒や喫煙の習慣も唾液分泌量を減らす一因です。
現代病の1つとして、患者数も増え続ける「ドライマウス」。
でも、ドライマウスは単なる「口腔内の乾燥」だけではなく、「オーラルフレイル(口の機能の衰え)」の最も重要なサインなのです。
唾液の分泌量が低下して、口腔内が乾くことで引き起こされる症状ですが、単なる「口渇症状」として放置していてはいけません。
唾液の量が減ると、口腔内の衛生や咬合力など、様々な口腔機能に影響が出てきます。これらが進行すると、食べる機能や食事摂取量が低下し、いわゆる「オーラルフレイル」を引き起こします。
食べる機能が衰えると、食べ物や唾液などが気道内に入ってしまう誤嚥(ごえん)も起こしやすくなり、 「誤嚥性肺炎」などの病気にも繋がりかねません。
ここでは、「取り入れた方が良い習慣」「やめた方が良い習慣」に分けて、ドライマウスの対処法をそれぞれ紹介します。
【取り入れた方が良い習慣】
1)唾液腺マッサージ
毎日実践するのは少しハードルが高いかもしれませんが、口周りのマッサージをするだけで、唾液が出やすくなるのでおすすめです。
【耳下腺】
指全体で耳の前、上の奥歯のあたりを後ろから前に円を描く。
【顎下腺】
親指を顎の骨の内側の柔らかい部分に当て、5カ所くらい順番に押す。
【舌下腺】
両手の親指をそろえて、顎の下からグッと押す。
2)こまめな水分補給はもちろん、ガムを嚙む
体全体の水分が少なくなると、その分唾液も少なくなります。水分補給を十分に行いながら、唾液不足に対処しましょう。
また、ガムを噛むのも効率的な対策です。唾液腺が刺激されるので、唾液が良く出るようになります。
【やめた方が良い習慣】
1)柔らかいものばかり食べる
柔らかい物ばかりを食べていると、強く噛まなくなるので、次第に唾液線の機能が弱まり、唾液量も少なくなっていきます。
固いものもしっかり噛んで食べて、唾液の分泌を促しましょう。
2)発泡剤を配合した歯磨剤の使用
発泡剤(ラウリル硫酸ナトリウム)は、歯磨剤に含まれる泡立ち成分のこと。
磨けた気分になり気持ちがいいのですが、ドライマウスで敏感な粘膜にとっては刺激になるといわれています。
市販品で発泡剤の含まれないものをお勧めします。
Check-Up standard | 一般のお客さま向け情報 | ライオン歯科材株式会社 (lion-dent.co.jp)
実は、ドライマウスを潤すための、お口専用の 「リンス」や「保湿ジェル」もあり、口腔保湿剤と呼ばれています。
乾燥を緩和するだけでなく、粘膜を保護し、口腔の機能を助けることもできます。
持ち運びできるサイズのアイテムも多いので、ドライマウスが気になる方は、ぜひ手にとってみてください。
・潤いリンスで清潔に
乾燥した不快なお口をすすぐことで、潤してスッキリ清潔にします。
ブラッシング後や お口の乾きが気になる時に手軽にケアしましょう。
コンクール マウスリンス (weltecnet.co.jp)
・保湿ジェルで保湿・保護
ジェルを舌で行き渡らせることで、お口の潤いを長持ちさせます。
外出先でも手軽に使用できるので、のど飴でのどを潤すように、気軽に取り入れましょう。
義歯を使用されている方は、義歯の内側に塗布することで、より長時間保湿でき、粘膜の擦れを予防できます。
コンクール マウスジェル (weltecnet.co.jp)
保湿性薬剤、保湿力の高い洗口液、保湿ジェル、スプレーによる噴霧、夜間の乾燥を防ぐ保湿用マウスピース、夜間義歯などを症状に応じて処方、投与します。
積極的に水分を補給するように心がけるのも、有効な方法です。
治療としては、原因が明らかで治療が可能であれば、原因疾患の治療を積極的に行い、生活習慣を改善します。また、薬の副作用が推測される場合では、薬物の中止や減量などを考慮します。治療や原因の除去が困難な場合には、対症療法が必要になります。疾患によっては唾液分泌促進作用のある薬剤が有効な場合があります。ジェルやスプレータイプの保湿剤、保湿成分入りの洗口液や、こまめに水を飲んで口の中を潤すのも効果的です。
また、唾液腺を刺激する方法として、普段からよく噛んで食事をすることやガムを噛むこと、唾液腺・歯肉マッサージや舌のストレッチも有効な方法です。
口腔内乾燥を起こす可能性のある主な薬剤として、①利尿剤(ラシックス、フルイトラン)、②抗コリン剤(アトロビン、ブスコパン)、③抗ヒスタミン剤(ポララミン、レスタミン)、④抗パーキンソン剤(アーテン、アキネトン)、⑤向精神薬(抗うつ剤、トランキライザー)などがありますので、主治医と相談してください。
【口腔乾燥症と食事】
原因は多岐にわたりますが全身的な要因としては糖原病、貧血、ビタミンB欠乏症、高熱や脱水、老化なども挙げられます。治療は原因をみつけてその除去を行います。糖尿病の血糖コントロール不良の場合は感染に対する抵抗力が弱く、治癒能力も低下しているため口腔乾燥症に加え歯周炎や親しらずの炎症などが起き易い状況にあります。従って血糖値の改善が基本となります。常に体格に見合った食事を摂取するようにこころがけましょう。また、貧血の場合も鉄を含む食品だけでなく食生活全体の見直しをしてみましょう。鉄を多く含む肉類や魚介類と、新鮮な野菜・果物などビタミンCを多く含む食品を同時に摂ると吸収率が上がります。そのほかビタミンB類、葉酸、銅なども摂るようにしましょう。ビタミンB類を多く含む食品としては豚ヒレ肉、カレイ、鯛、鯖、大豆、菜の花、小松菜、ほうれん草などがあります。葉酸は肉類や若布、ひじき、昆布などの海藻類に含まれています。要するに多種類の食品を少しずつ満遍なく摂取することが予防に繋がっていきます。
【参考資料】
日本口腔外科学会
日本赤十字 広島赤十字原爆病院
国立病院気候熊本医療センター
https://kumamoto.hosp.go.jp/pdf/kusu200403-065.pdf
Weltec